平和祈念シリーズ6・楽浪の素体ハンター2009-11-14 Sat 18:23
私は金兵姫、楽浪民主主義人民共和国一級改造工作員である。
改造工作員というのは、人体の一部を機械化改造して作戦能力を高めた特殊工作員である。 そのうち、一級改造工作員とは、わが共和国が誇る精兵から選抜された志願者が改造手術を受けたものだ。 そして、二級改造工作員とは、強制収容所の囚人や拉致した外国人から適合素体を選定して強制的に改造手術を施した物だ。 一級改造工作員は、外国に潜入して破壊工作や拉致の任務にあたる。 したがって改造範囲は目立たない箇所に限られ、戦闘力の強化も限定的とならざるを得ない。 もっとも、元が精兵であるから、さほど機械化改造に頼る必要はなく、保険程度の投資がされているようなものだ。 具体的には、腕力と脚力を強化するため手足の骨が補助動力を仕込んだ人工骨に置換されているほか、頭部に通信装置が埋め込まれている。 戦闘では主に頭部の通信装置を用いて、二級改造工作員を指揮監督し、ときには強制停止や自爆を指令する。 潜入工作中には自ら腕力を発揮せねばならないときもあるが、生還困難な任務ではなるべく二級改造工作員を捨て駒に使うことが奨励されている。 もちろん一級改造工作員も非常時の機密保持のため改造箇所には自爆装置が仕込まれているが、起爆はあくまでも自らの意志で行う。 もっとも、いざというときに自爆を躊躇えば、親族に大将軍様のお怒りが降り注ぐことになるから、みな相応の覚悟はできている。 一方、二級改造工作員はもともと不要な人間を改造した使い捨ての破壊兵器である。 四肢は完全に切断して任務に応じた武装義肢を付けるアダプターになっている。 頭部には司令用の通信装置だけでなく、服従しないとき脳に直接電気ショックを加える装置が組み込まれている。 四肢の制御も強制停止が可能になっている。 そして、生殖器と腎臓を除去して確保したスペースに強力な自爆装置が搭載されている。 この自爆装置は、一級改造工作員からの遠隔指令で起爆できる。 二級改造工作員は定期的に透析を受けなければ生きられないので、たいていの場合自爆装置で脅さなくても服従するし、任務がないときは手足を外してしまうから逃亡もまず考えられない。 さらに工作船に乗せるようなときは、事前に訓練施設で電気ショックを加えながら猛訓練を施し、抵抗の意志を完全に打ち砕いてから使用する。 今回の私の任務は、外国で二級改造工作員の素体を確保することだ。 そのため東海を越えたところに浮かぶ小憎らしい島国に来て、素体になりそうな人間の拉致にあたっている。 この辺りには、密航時の上陸に適した寂しい海岸が多い。 そんな寂しい場所にも、賄賂が横行する島国の愚政者が建てさせた意味不明な建物が点在する。 そのうち私が目を付けた施設の一つは、大学だった。 こんな辺鄙な場所で一体何を学ぶ気か知らないが、この国は受験競争に落ちこぼれた学生を甘やかすため、誰でも入れるような大学を建てるのが流行らしい。 若者をそんなところで遊ばせていないで、農村で労働させるか、少しは使えそうなら兵士にすれば良さそうなものだ。 何故こんな無駄な施設を作るのか理解に苦しむが、まあ私にとっては好都合だ。 この島国が荒廃すればこちらには有利になるし、こんなところにいるバカ学生なら拉致してもたいした騒ぎにはならないだろうから、素体確保の良いターゲットになる。 今日は失敗してしまった。 ちょうど人通りの少ない場所で、活きの良さそうな女学生を見つけて拉致を決行したのだが、思いの外激しい抵抗に遭って、つい力を入れすぎ殺してしまった。 出撃前に整備を受けたとき、人工骨内の補助動力を更新されたのだが、増強された出力にまだ十分慣れていなかった。 自覚はしていたのだが、目撃されないうちに片付けようと焦ったのがいけなかった。 こんなときは、我々の作戦を察知されないよう、変質者の犯行に見せかけて死体を遺棄するしかない。 急いで死体をアジトに運び、首と手足を切断する。 両腕に充電コイルを付けたままだとやりにくいが、さっきはかなり激しく争ったから電池が消耗しているし、かといって死体の処分も急ぐ必要があるからしかたがない。 それに運んで捨てるだけなら五体をバラせば十分だろうが、ここから先が肝心だ。 さらに脚を関節ごとに切り離し、太股は肉をはぎ取って骨だけにする。 こうすれば、一部食べたようにも見えるから、捜査の目は変質者捜しに向くだろう。 はぎ取った肉は細切れにして焼き、トイレに流してしまえば見つかりっこない。 あとはバラバラにした首、胴、手足を、何処かの林道沿いにばら撒けばいい。 この国の警察はいい加減だから、たぶん変質者の犯行と決めてかかる。 そして教育の荒廃したこの国なら、それらしい変質者なんかいくらでもいる。 あとは本国と取引のあるヤクザ組織を使って、政治家に警察は何やっているとハッパをかけさせる。 これで警察は焦り、無理矢理犯人をでっち上げてしまうだろう。 この国の司法は能無しの癖にエリート意識だけは高いから、一度犯人と決めつけたら意地になって証拠を捏造してでも有罪にし、再捜査などしない。 ほとぼりが冷めるまで沖の工作船に戻って待ち、また次の捕獲作業にかかればよいのだ。 有り難いことに、秘密を守って素体を持ち帰れれば、何人余計に殺そうが大将軍様のお咎めはない。 死体を刻むうちに力加減も判ってきたから、もう失敗なんかしないニダ。 ーーーーーーーーーーーーーー 女学生バラバラ事件はいかにも猟奇犯に見えます。 でももしかしたら楽浪工作員の犯行なのでは、という空想が浮かび、書かずにはおれなくなりました。 奴らの暗躍する限り、平和はありません。 |





