オプションパーツシリーズ未来編「ケンタウリ」 | (6)練習艦 | 38/382008-05-24 Sat 07:02
(帝都宮殿・謁見の間)
洋子:「恒星間飛行候補者第1組の者、全員無事帰還しました。」 朝子10世:「初飛行の成功、大儀であった。本音を言えば東宮だけは乗せたくなかった罠。 どんな事故があっても不思議ではなかったからね。貴女が候補でなければ監督を任せたかった。」 洋子:「お気持ちは察しますが、あの艦の設計に最初から関与していなければ解らないことは多いです。 私の指揮が妥当と評価していただけたか自信はありません。到底他人の指揮を評価など出来ませんよ。」 朝子10世:「うん、恒星間飛行を目指すが故に根っから技術屋の娘を東宮に据えたのだ。 もちろんアレがこの度のように自らリスクを冒してでも完璧を目指す性格なのも承知だった。 だが、万一のときはこの老いぼれが当分内政を見なければならなくなるのがいかにも厳しいのでね。 貴女の顔を見てほっとしたせいで、余計なことを言ってしまった。聞かなかったことにしておくれ。」 洋子:「もとより他言など。」 朝子10世:「で、実際に標的回避をやってみて本番でどこまで出来ると思う?。」 洋子:「あの標的は破壊不能な大きさがあって最も発見が遅れるサイズの障害物を模しています。 今回はなるべく船体に無理をかけない方針でしたからあえて3段目の標的を回避をしませんでした。 艦の姿勢制御システム自体はまだ余力があったので本番なら回避を優先し実際に回避も可能と考えます。 問題はその際誘発される各部の故障に対処している最中に新たな障害物と遭遇するおそれでしょう。 確率論から言えば太陽系外縁部にそれほど多くの障害物が存在するなら観測にかかっているはずです。 1個の物体が小さくても群れをなしていれば光や電波を遮る現象が起きそうですが観測例はありません。 おそらく訓練標的のように人工的な配置がされなければ4回続けて障害に遭遇することはないでしょう。」 朝子10世:「その考えにはほぼ同意だね。だがオールト雲の状況に関する情報は極めて少ない。 カイパーベルトですらかつて予想された以上に軌道傾斜が大きい矮惑星が多数見つかっているんだ。 太陽や木星の潮汐力が弱いオールト雲の分布は球殻状と考えるべきで南極方向が薄いとは期待できない。 だから例外に出くわした場合を常に想定して行動して欲しいね。」 洋子:「そのために単艦でなく5隻からなる艦隊による計画としたのですよね。 3隻がたどり着ければ植民に必要な物資と人員が足りるよう余力を見込んでいるのですから。 持って行ける物量だけならもっと太い船体に複数の爆風受けを付けた単艦の方が有利でしょう。 高速航行中の移乗が可能かなんて考えずに済む利点もありますし。」 朝子10世:「それは後から考え出したことなんだな。むしろ旋回性能が主な制限要因だよ。 太い船体は重量の割にバーニアを設置できる場所が少ないから旋回が遅くなる罠。 ビームで破壊できない隕石に対する電探の有効距離から求めた回避時間で最低旋回性能を決めたんだ。 それで単艦の重量が制限されたために最低3隻分の積載量が植民に必要だと言うことになった。 どうせ艦隊行動を前提にしなければならないなら歩留まりを考えようという訳さ。」 洋子:「それでも3隻で足りるという保証はどこにもないんですよね。」 朝子10世:「当然、恒星のタイプが同じだから資源状態が太陽系と大差ないという仮定での話だね。 カイパーベルトに類する天体群が少なければ現地での消耗品調達は難しくなる。 それに金星のような高温惑星や砂漠の惑星を可住化して素体生産地に出来る可能性も少なくなるね。 人員を補充できない星系なら無人観測ステーションを設置して帰る以外出来ることはないだろうよ。 そういう限界は5隻全部が無事着いたとしても変えようがない罠。」 洋子:「手頃な天体が無い場合だけはどうにもなりません。手ぶらで帰る覚悟はしていますよ。 そもそもこんな計画に参加しようという娘は大抵根っからの宇宙飛行好きですから心配ありません。 むしろ、目的地が決まって飛行が終わるときの方が心理面では心配なくらいです。」 朝子10世:「そうだな。どっちに転んでも難しい。 そして残念だがこの老いぼれがその結果を知ることは絶対に無い。 全ては若い者に託すしかないんだよ。報告ご苦労だった。 期間が規定の最短だけで済まないが、精一杯休養しておくれ。」 洋子:「今ごろは北に向かっている第2組の成績が気がかりではありますが、忘れるよう努めます。 でわ下がります。」 (こんな練習飛行が一巡すれば、部隊編成となります。 それまでには、かぐやたち下っ端の過重労働もピークに達することになりますので果たして保つのか判りませんが。 次回予定:「方面軍編成」。) Prev |
オプションパーツシリーズ未来編「ケンタウリ」 | (6)練習艦 | 37/382008-05-24 Sat 06:54
(2日後、”ぐりーんらんど”)
華子4世:「たったいま標的設置に当たる第3組艦長候補から準備完了報告があった。 これより、第2組の練習飛行を開始する。艦長候補亜衣羅、指揮を引き継ぎなさい。」 亜衣羅:「方向転換用意、正副操舵員、着首よいか?。」 朝子13世:「第一、第三獄門台を使用します。第一獄門台接続良好。」 はるか:「第三獄門台接続良好。」 亜衣羅:「よし、北極方向に針路を取れ。周囲安全確認後直ちに核パルス推進を始める。」 朝子13世:「前後バーニア、ジャイロ同期よし、方位真北まで30秒。」 はるか:「上方視界良好、針路障害見あたらず。北極星確認。」 亜衣羅:「総員、耐G体勢。想定加速度4G。」 朝子13世:「前後バーニア逆転、ジャイロ制動、方位真北。」 亜衣羅:「核パルス推進、種原爆1、推進弾92万、推進開始。」 朝子13世:「射出します。」 Prev ←→ Next |
オプションパーツシリーズ未来編「ケンタウリ」 | (6)練習艦 | 36/382008-05-23 Fri 01:13
(”たけ”艦外艦底部)
かぐや:「給水終了。ホース抜くよぉ。(キュポンッ)」 まさみ:「うっうっ・・・はぁはぁ。閉めます。」 みどり:「給水ホースを倉庫に収納したらすぐ発進するわよ。 後ろがつかえているんでね。急いでおくれ。まさみ、ぼーっとするんじゃない。」 まさみ:「あ、気持ちよくてつい、済みません。ヴァギナルハッチロックよし。」 美佳:「給水ホース収納できました。作業員帰還点呼よし。」 みどり:「”ぐりーんらんど”操舵員へ、舌ゆるめてちょうだいな。」 まさみ:「離されました。バーニア後進かけます。」 みどり:「よし、あと2往復、みんな気を抜かずにやっておくれよ。」 まさみ:「あと4回もヴァギナルハッチの抜き差しかぁ。壊れそう。」 かぐや:「なんなら代わろうかぁ。アレ、気持ちよさそうじゃない。」 みどり:「かぐやは無駄な加速が好きだからこの運行には向かないね。 ここはまさみに任せる。気を確かに持って頑張るんだよ。」 Prev ←→ Next |
オプションパーツシリーズ未来編「ケンタウリ」 | (6)練習艦 | 35/382008-05-23 Fri 01:07
(”ぐりーんらんど”)
はるか:「第3ヴァギナルハッチ開口、うっ、順調に水入ってきました。メインタンク87%。」 亜衣羅:「あと13回か。この艦へ補給するのに旧式資源収集艦では小さすぎるわねぇ。」 華子4世:「専用給水艦は重いので地球から回航するのも時間がかかりすぎて大変なのよ。 なにしろ建造用資材の鉄資源収集や水銀集めのために目一杯艦を出しているから人が足りなくてね。 こんなに減るほど補助推進器を使う機会は地球離脱時だけなんだから火星で建造するのも勿体ないし。 でも、本番艦5隻にこれを繰り返すのはちょっと馬鹿馬鹿しいわね。 火星大工場であり合わせの資材をつぎはぎして簡易型給水艦を作れないか考えることにするわ。」 亜衣羅:「火星大工場の造船部門は外国人労働者をたくさん使っていますよね?。 決まり切った旧式艦の組み立てや補修は安くできるでしょうが変則的な艦は危険ではないですか?。」 華子4世:「満漢の隕石鉱夫船はじめ怪しげな船の補修をやっているから変則工事は慣れているはずよ。 外国人労働者はエキシマ溶接をアイビームで精密操作できないからどうしても強度が劣るけどね。 高速連絡艦みたいな高加速艦だったら外国人を使うのは危ないけど近距離専用の給水艦なら大丈夫ね。 火星大工場からここまでなら0.2Gも出せればいいから強度は一般補修レベルでなんとかなるわ。」 亜衣羅:「高速連絡艦”つがる”から報告です。地球軌道まであと3日、順調に減速中とのことです。」 華子4世:「早いわね。こっちの補給を我慢した甲斐があったわ。」 Prev ←→ Next |
オプションパーツシリーズ未来編「ケンタウリ」 | (6)練習艦 | 34/382008-05-22 Thu 07:21
(”たけ”艦橋)
まさみ:「出航操作終了。運動方向、”ぐりーんらんど”係留地点に向きました。 あちらとの速度差は秒速0.2キロです。増速しますか?。」 みどり:「速度はこんなものだね。あまり飛ばすと軌道高度の補正に推進剤食い過ぎるわ。 自艦で消費しすぎると運搬回数が増えてかえって補給が遅れちまうからね。」 かぐや:「さすが気の長さでは誰も敵いませんね。」 みどり:「ふぉっふぉっふぉ。当局はそこまで考えて年寄りをかき集めたのかな。」 美佳:「これでも片道13分ですから言われてみれば急ぐ意味もないですね。」 みどり:「若いうちはみんな理由もなくせっかちになるものさ。私モナー。 私には先に素体採用された姉が居たのさ。それで、とにかく対抗したくてね。 サイボーグになりたての頃はいつも追いつけ追い越せばかり考えていた罠。」 まさみ:「艦尾を進行方向に向けて減速に入ります。ジャイロ起動。」 みどり:「他に作業船が接近している可能性が高い、みんなで後方監視を手伝って。」 かぐや:「あ、たったいま1隻離れたところです。ちゃんと通行帯を守っていますね。 これならこのまま進んでもぶつかる心配はないですよ。」 まさみ:「速度差秒速8mに落ちました。艦首戻します。引き続きバーニア後進。」 かぐや:「”ぐりーんらんど”から発光信号、このまま口腔エアロックに艦首を突っ込めと。」 美佳:「距離50m、速度差秒速3m。」 みどり:「落とし杉かも、少しバーニア絞って、うん、そんなものだな。 あとはあっちの操舵員が舌で捕まえてくれるわよ。一応ドッキングの衝撃に注意。」 かぐや:「ナイスキャッチでした。」 みどり:「さあ、総出で船外作業だ。まさみは残ってヴァギナルハッチの操作ね。 かぐやは機関員2名をつれて本艦ヴァギナルハッチ側でホースの接続。 美佳は倉庫番と一緒にあっちの艦の補給口にホースを持って行くんだ。 ヘッドフィギュアのもやいは私がやる。全員、生命維持切り替えミスに注意よ。」 美佳:「たしか、あちらの艦には補給口がたくさんあるはずです。えーと・・・。 口腔内2カ所と4基の補助エンジンにそれぞれヴァギナルハッチがありますね。」 みどり:「ふむ。いま確かめるよ、・・・、今回は第3補助エンジンに行っておくれ。」 Prev ←→ Next |



