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ここはSF・オプションパーツ2「ケンタウリ」総集編(一般向け)サイトです。  2008.05.11連載再開に向けてテンプレ修正、エントリをシーン単位に変更。 2008.10.05 連載第8回まで掲載。

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オプションパーツシリーズ未来編「ケンタウリ」 | −−(2)制憲会議−− | 5/5

(翌日、制憲会議@帝國議事堂・元老院議院議場)

元老院議長:「第1回制憲会議を開会します。皇帝趣旨説明。」

朝子10世:「では召集要請の主旨を話します。今般の要請は恒星間植民計画に伴うものです。
他星系に領土が拡がった場合、最も近いアルファケンタウリでも通信に片道4.3年を要します。
これを皇帝が直接統治するのは不可能です。このため、皇室や公家の制度改正が必要なのです。
お手元の素案後半が改正条項になります。
素案の作成は東宮を座長とする恒星間植民検討委員会がまとめた物です。
したがって、本日の質疑に対する答弁は主に東宮が行います。誤解のないよう言っておきます。
帝国憲法は、厳密には欽定憲法ではありません。この制憲会議に発議権があります。
したがって、ここで十分な討議を行って皆さんの責任で発議を行って頂くことになります。」

元老院議長:「では、衆議院選出議員団より代表質問をどうぞ。」

衆議院代表:「えー、改正素案を拝見しますに、改正条項は私どもへの影響は無いようです。
私ども衆議院は民生に関わる制度および予算につき責任を負う議院であります。
事の本質が、軍事外交案件に属するならば元老院主体で話を進めればよい気もいたします。
シビリアンに関わりのある要素があれば教えていただきたいのですが。」

元老院議長:「答弁者、壇上に。」

答弁映像1
華子4世:「確かに、本改正案で帝國におけるシビリアンの地位が変わることはありません。
ただ一つ、元老院議院定数表の帰還者枠にシビリアンの割り当て分も加わるというだけです。
しかしながら、この改正案はそもそも恒星間航行の開始を前提としたものです。
恒星間航行という前例のない巨大プロジェクトを行えば帝國経済への影響も甚大です。
幸い、カイパーベルト資源を独占している現状では民政予算の減少は予想されません。
しかし、これが諸外国を刺激して新たな宇宙軍拡競争を呼ぶ可能性もあります。
また、経済に重大な影響が生じなくとも宙軍シビリアン出身兵には大いに影響があります。
計画開始時の搭乗員は志願者を充てる事になりますが、将来もその通りとは約束しかねます。
状況によっては、異星系への渡航を強制的に命じられ、そこで人生を終える者も出るのです。
帝國宙軍は終身兵役制を採用してはいますが、今まで十分な地上休暇が保証されていました。
また、サイボーグ兵の死亡事故も少なく、諸外国の軍に比べ気楽な面も多かったのです。
未踏の星系への渡航となれば、このようなQOLは一切保証できません。
現時点でこの冒険に参加する利点はただ一つ、他星系に子孫を広げる可能性だけです。
植民地から資源がもたらされる可能性が少しはあるとしても、100年以上先のことです。
このような将来のリスクと可能性も込みで議論に臨んでいただきたい。」

衆議院代表:「金星のように一般シビリアンが入植する余地はあるのでしょうか?。
帝國はまだ良い方ですが、資源枯渇により地球の暮らしは年々窮屈さを増すばかりです。
シビリアンの生活圏も広げられるなら一時苦労してでもと言う者も多いと思いますが。」

華子4世:「一般シビリアンの星間航行は凍結受精卵で運ばれる形でしか実現しません。
現存の者は素体適性と耐G特性がなければ行けません。現地出生者の帰還も同様です。
財政面からは、単に地球滅亡に備えたリスクヘッジにいくらかけられるかという話です。
費用は、星間航行艦と積み込まれる燃料・資材の調達費、人員の育成費が殆どです。
発進時には想定される全てのケースに必要な物資を揃えて持っていくようになります。
星間航行艦の発進時重量は100万トン前後、人員は50名ほどを想定しています。
人員以外は殆どが宇宙資源から生産でき、1隻の質量が年間資源収集量の5%相当です。
重量比では発進時重量の90%が核融合燃料とそれを包む弾体で占められます。
この重量比を抑えるため途中で船体中間の貨物コンテナを解体して弾体の素材とします。
それでどうにか現用カイパーベルト航路艦の2倍ほどの有効ペイロードとなります。
単艦だと大きな事故があればお終いなので5隻程度の艦隊を組むことになります。
発進してしまえば太陽系からの支援は出来ないので通信を除くサポート費はありません。
狙い通りに開発可能な天体が見つかれば後続艦の運航という追加費用が発生します。
人員については現地で素体が生産できるようになれば流出と流入を均衡させられます。
現地の資源状態により後続艦の積む物資は変わるので、今は見積もりが出来ません。」

衆議院代表:「大きな事故というのは何を想定しているのですか?。
高速航行中に艦の間を行き来することは可能なのでしょうか?。」

華子4世:「最も恐ろしいのは物体との衝突です。対策は早期発見と回避に尽きます。
惑星規模の物体なら数時間前からレーダーに映るし、余程黒くなければ光学的に見えます。
一番怖いのは、発見が遅れやすい100キログラム程度の石質小隕石です。
見つけてから0.1秒で側面バーニアに点火して回避しないと間に合いません。
これより小さければビームで破壊できるし当たっても緩衝区画で食い止められます。
艦どうしの行き来は、核パルス推進中でなければ精密に速度を合わせられます。
ただし、艦外活動中の物体衝突が怖いので、やむを得ないとき以外はやりません。
衝突以外にありうる事故としては核パルス推進装置が故障し修理困難となることです。
爆風受け自体は強度が大きいですが、燃料弾の射出装置が故障することはあり得ます。
半数が故障しても航行できるよう余分に搭載しますが、絶対と言うことはないので。」

衆議院代表:「艦載原子炉の暴走事故は想定されませんか?。」

華子4世:「艦載炉は点火用核分裂物質生産を兼ねた重水炉になるので事故率は低いです。
これも絶対はないので、緊急時には数分以内で1基毎独立に投棄できるようにします。
乱暴なようですが、地上と違って投棄さえ成功すれば誰にも迷惑が掛かりません。
投棄後も半数までなら失っても航行に差し支えないよう十分な台数を搭載します。」

衆議院代表:「事前に無人艦を飛ばして航路の障害を確認したほうが良いのでは?。」

華子4世:「一応既に行っていますが、無人艦で核パルス推進を行うのは困難です。
このため、既存の核パルス推進艦から無人化した旧式艦を射出する方法で行いました。
この方法ですと速度が光速の1%程度しか出ないため、先行できる期間が限られます。
いずれ恒星間航行艦に追い越され、以後は航路確認から通信中継に役目が変わります。
この先行期間は、核のノイズでレーダーの働きが低下する発進加速時をカバーします。」

衆議院代表:「減速時も同様に危険性が高まるのではないですか?。」

華子4世:「減速時は核パルスの爆風が前方の小物体を吹き払うので比較的安全です。」

衆議院代表:「艦の規模に関してですが、100万トンと言えば工場衛星なみの規模です。
現在核パルス艦は全て火星軌道で建造していますが、遠いため作業員の稼働率が劣ります。
この体制で、5隻もの巨艦を建造するならもっと徴兵が増えるのではありませんか?。
シビリアンからの素体供出はもはや限界だと思うのですが?。」

華子4世:「恒星間航行艦はイオンエンジンだけで星系内航行が出来る仕様になります。
したがって、建造場所は核パルスが使えない地球軌道上でも良いことになります。
もちろん今後とも優良素体の供出に努力していただくようお願いすることにはなります。
しかし、素体適性を度外視した無理な徴兵をするつもりは毛頭ございません。」

衆議院代表:「これ以上詳細を伺っても私どもには話が難しすぎるようですね。
判ったことは、非常に予測困難なリスクが多く参加する者は覚悟が求めらることです。
それから当面は私どもの暮らしに無理なしわ寄せが来ないだろうと言うことですね。
これでは衆議院の態度をまとめられません。各自の価値観で票決するしか無いでしょう。」

華子4世:「肝心なことが判って頂けて幸いです。」

元老院議長:「では、元老院議員団代表質問をどうぞ。」

元老院代表:「我々元老院は皇族、貴族が主体でシビリアン議員も宙軍兵が多いです。
一般シビリアン議員も閣僚経験者や学界、財界から選ばれているので事情を知っています。
したがって、宇宙資源の獲得状況を直に見た者が多く、財政的懸念はあまり出ていません。
むしろ、身辺に恒星間飛行要員を志願する者が居るため生活上の問題に関心があります。
恒星間飛行中は生命維持物資生産に家畜が使えないということが最大の関心事ですね。
となると、サイボーグのボディが家畜に依存しない機能を備えうるのかまず確認したい。」

華子4世:「既に試作機が完成しており、菜食のみで生活可能なことを確かめました。」

元老院代表:「人柱なら玄米で生存可能でしたが人間型で消化装置が収まったのですか?。」

華子4世:「昨日、工場衛星に出向いて実物を試用し問題がないことを確かめました。
そのまま借りてきたので、お見せしましょう。ぬぎぬぎ...この通り完成しています。
答弁映像2
核パルス推進時の被曝から消化装置を護るため胴の下半分が厚い金属外骨格です。
最下部には生殖組織が搭載できる専用生命維持装置も組み込まれています。」

議員一同:「うおお、(一部の者:ラッキー、こんなところで東宮様の裸が拝めるとは)。」

元老院議長:「お、おっほん、あー東宮様、議場で全裸はいかがなものかと。」

華子4世:「このボディは耐圧強化のため開口部が局限され乳首や外性器がありません。
見た目はチュ−ブトップのレオタードと変わりませんから道徳上の問題はないでしょう。」

元老院議長:「御意。質疑を続けていただいて結構です。」

元老院代表:「外性器がないと精神衛生や生活習慣の維持が難しいのではありませんか?。
また、生殖組織の搭載が可能と仰せですが、そのボディで出産が可能なのでしょうか?。」

華子4世:「このボディは現用の人工小脳型向けボディと首ソケットの互換性があります。
したがって手軽にボディをすげ替えられます。艦の安全な区画には休養エリアを設けます。
よって核パルス推進を停止する巡航中ならば交代で地上用ボディにすげ替えて暮らせます。
休養区画には世界各国の繁華街を模した施設を設け、地球全体の風俗習慣を持ち込みます。
もちろん、有害な宗教的思想に基づく習慣が持ち込まれないように内容は十分吟味します。
出産についてですが、航行中は絶対不可能ですから現地の素体生産可能環境が前提です。
このボディはメンテナンスのために金属外骨格部を前後に分割切り離し出来る構造です。
したがって、可住環境でなら妊娠出産のために前面を弾性素材へと交換できるのです。」

元老院代表:「飛行に40年以上かかったら搭載する生殖組織が老化しすぎませんか?。」

華子4世:「頭部と独立した生殖用生命維持装置は低温冬眠状態で生命維持を行えます。
ただ、子宮の搭載は搭乗員の1/4だけになるので産む機械が足りない問題もあります。
予備として任意の動物の受精卵を引き受けられる遺伝子組み替え豚の子宮も使用します。
本来は家畜を現地で再生するための資材ですが、あぶれた人間の受精卵も引き受けます。」

元老院代表:「なぜ半数でなく1/4だけ?。それに豚子宮だって劣化しませんか?。」

華子4世:「恒星間航行艦の乗員は片側の精巣か卵巣を搭載し反対側は地球に残します。
旧性が女の者全員が子宮を持っていくと地球の生殖バンクで子宮が逼迫してしまいます。
運悪く素体生産地を獲得できないリスクを考えると恒星間航行要員を優遇は出来ません。
豚子宮劣化の恐れもありますが、多めに積んでいって調子の良いものを人間に使います。」

元老院代表:「精巣の搭載によって男性帰りを起こし精神的に破綻する危険性は?。」

華子4世:「生命維持装置が完全に分離しているので技術的に危険性はありません。
ただ、気分的な問題というのは未知の要因です。絶対安全とは言えないでしょう。」

元老院代表:「生殖組織を個体搭載せず、艦載生殖バンクを設けたらよいのでは?。」

華子4世:「事故で全滅するリスクも考慮し、分散して各自で護らせることにしました。」

元老院代表:「現地生産素体間で出生子宮による差別が発生する恐れはありませんか?。」

華子4世:「そういう事が無いよう搭乗員の選抜や教育に際して十分配慮を行います。
但し、憲法改正案では現地の統治組織が殆ど全権を委任された独立性の高いものです。
ですから憲法を共有していても立法や行政の実務における解釈には幅があります。
我々が差別と考える行為が、現地の環境によっては合理的な区別になりうるのです。
即ち、差別の定義自体が不確定なので、そのような懸念は無視するしかありません。」

元老院代表:「皇家や貴族による統制が崩壊することもあるのでは?。」

華子4世:「世代間参勤交代制によって現地出生者がそのまま支配することを回避します。
特に統帥権を持つ副皇帝と副皇太子の地位に就く者は地球からの渡航者に限られます。
本国との依存関係を保つため定期便による支援物資は渡航者に対する員数割りとします。
つまり、現地出生者が本国の援助を受けるのは、渡航者を通してのみ可能とするのです。
したがって、本国と極度に異なる価値観による統治が行われる可能性は少ないと思います。
現地出生者のうち特に優れた者は地球に向かう艦に乗り組んでしまうので競合しません。
帰還者の処遇を保証し現地の意見を政策に反映させるため元老院の定数を配分するのです。
現地で出生し素体適性が無かった者の立場は地球における一般シビリアンと同じです。
また、全ての渡航者は片側の生殖器官を地球に残すので本国との血縁が維持されます。
よって、シビリアン兵の子孫で渡航能力が無かった者もある程度の血縁は続きます。
地縁血縁は本能に根ざす感情ですから、地縁が薄い分を血縁で補うということです。
参勤交代と血縁の維持によって決定的離反は起きないものと考えています。」

元老院代表:「なるほど、生殖と参勤交代制の関わりが漸く理解できました。
質疑が長くなって恐縮ですが新型ボディについてもう少し確認させて下さい。
従来も手足用のファッション外皮や特殊な趣味の者向けに金属外皮はありましたね。
しかし、最重要部位を覆い外性器や乳首も無しとなるとかなり感覚が違うでしょう。
限られた休息時間を除いてこれが標準となると精神的影響が気になるところです。」

華子4世:「まだ48時間ですが、私が試した限りではさほど違和感はないですね。
ただ、首ソケットが互換だから誰でも同じように感じるという保証は無いです。
こればかりは、それぞれ自分で試していただかないと、判りません。」

元老院代表:「なるほど。ぜひ試してみたいものですね。」

華子4世:「宜しければ、どなたかこの場ですげ替わってみますか?。」

元老院代表:「そうしたいところですが、あいにく私は有脊髄型です。
そうだな、誰か若手で...桃子侯どうです?。」

桃子:「望むところです。では、早速。」

華子4世:「こっちに来て首を外して下さい。そのまま持ち替えましょう。」
答弁映像3

桃子:「はい、じゃ、首交代ですね。制御入れ替え良いですか?。」

華子4世:「いいわよ、せーの、無線リンク交換。OKOK。」

桃子:「よし首差し込んで...繋がった。ああ、特に変わった感じはないかな。
ちょっと、体動かしてみましょうか、うん背を丸めるときは微妙に違うかしら。」

華子4世:「胴の上半分の柔軟性は通常型より大きく取ってあるのよ。
だから、全体的な姿勢は全く同じにとれるけど、曲がる位置が高めになるのね。」

桃子:「宙軍は背筋の伸びた姿勢のいい人ばかりだから普段は関係ないですね。
お辞儀をするときは股関節で角度を取った方が格好いいから、問題ないですよ。
このまま今日の閉会まですげ替わっていて良いですか?。」

華子4世:「他人用でも2時間は大丈夫だから存分に互換性を確認して下さい。
骨髄や肝組織は胴体搭載だから交換中は循環が中間液による透析式になります。
したがって、安全に首をすげ替わっていられる時間の制限は従来と同じです。
ごらんの通り、一般的な行動における違和感は少ないと思います。
外性器の欠如等の問題に関してはVRの活用と休養施設で補えるでしょう。」

元老院代表:「新型ボディの完成度についてはよく解りました。
あと一つ、恒星間飛行の目的地について確認したいと思います。
太陽系から近く可住惑星らしき天体としては、Red dwarf系 581c星が有名です。
あと10年もあれば核パルス推進システムを改良してこちらを探査できそうです。
皇紀200年という政治的意味を除けば急がず確実な方にと言う気もします。
アルファケンタウリを想定した計画の妥当性についてお答え下さい。」

華子4世:「仰るような推進システムとは、レーザー核融合を指すのでしょう。
造機部門の見解では起動時のみレーザーが働く融合炉より相当難しいのです。
2発目からは強い戻り光のためレーザーが不安定になるという問題があります。
10年待てば解決できるというほどには改良の方向性が定まっていないのです。
開発過程で核実験を繰り返せば外国との宇宙軍拡競争が激化するかも知れません。
その結果、10年以内に太陽系が安全な場所でなくなる可能性だってあるのです。
また機関の強化が実現し巡航速度が速くなると衝突事故の回避が難しくなります。
私が調べた限りでは機関強化よりも乗員の寿命延伸が解決に繋がると思います。
それとて寿命さえ延びれば片道200年近い飛行が出来るとも言い切れません。
一桁短い飛行期間での実績なしにいきなり踏み切るのは無謀でしょう。
その実績となりうる適当な距離にある有望な星系はアルファケンタウリだけです。
ここは、近い上に3重星系ですから、統計的に未発見惑星がある確率も高いです。
しかし主星が太陽級のため可住惑星があっても太陽系からは観測が難しいのです。
2番目に近い重星系はシリウスですが、青色巨星と白色矮星の組み合わせです。
つまり過去の超新星爆発によって惑星が荒廃している可能性が高いでしょう。
シリウスより近い他の恒星は赤色矮星なので可住惑星がある確率はごく僅かです。
つまり、行けそうな範囲に他の有望な候補星系は無いということになります。
もちろん、観測技術の進歩に伴う可住惑星発見があれば、目標変更も考慮します。
そこで、資材が許す限り無人標識艦だけは各星系に向けて射出しておく予定です。」

元老院代表:「技術と計画面での準備状況については一通り了解できました。
ご提案のように計画実行のため制度を整備したいというのはごもっともです。
まだ私見ですが、元老院の考えを取りまとめるのは数日で出来るでしょう。」

元老院議長:「質問が一巡したようですので一旦散会したいと思います。
両院内の意見集約には48時間あれば宜しいでしょうか?。異議は無いですね。
それでは、3日後に制憲会議を再開します。」

(国会中継を終わります。次回(3)核実験

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参考文献
近隣星系データリンク
連星系には惑星が多い

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(地下 青の公家廟)

廟守:「頻繁なお参りとは殊勝ですね、亜依羅侯。あ、そちらは東宮様。」

亜依羅:「今日は東宮様がご視察をお望みでね。調子いいの何柱か居るかな?。」

廟守:「先ほど桃子侯が実験のためお入りに。桃子侯の方がお詳しいですから。」

亜依羅:「解ったわ。桃子に聞いてみましょう。東宮様、こちらからどうぞ。」

桃子:「亜依羅、3柱で脳細胞残存率が増加できたわよ。あ、東宮様!一体?。」

華子4世:「どうやら良いところに来たようね。1つは貴女の実験に興味があって。
後は、明日の制憲会議に備えて、ここの亡霊達の意見も聞いておこうかと思ってね。
廟のシステムはここのが最も歴史が長く、亡霊の数や種類も揃っているでしょう。
前例のないことに取り組むときは雑多な経験がヒントになることも多いからねえ。」

桃子:「興味を持たれる意図はよく解りますが、まだ実用出来る状況ではないです。
5柱に培養ES細胞を注入したところ、3柱で明らかに脳細胞生存数が増加しました。
しかし、その3柱で増えた脳細胞が意味のある回路を構成したとも言い切れません。
現役サイボーグの寿命延長に使うには相当長期間のデータを取らないと無理です。」

華子4世:「その長期間というのが5年弱か10年以上かで随分話が違うのよ。
もし、200年を超える寿命が得られたら可住惑星が発見済の星系が狙えるわ。」

桃子:「単に生命に関わる安全性だけを評価するなら3年で出来るでしょう。
しかし、サイボーグ自律行動基準を超えるIQを維持出来るかはわかりません。
いや、その点はここの亡霊と話されれば幻滅なさるでしょうね。」

亜依羅:「とにかく覚醒させてみましょうか。実際知能が上がったか話せば判ります。」

桃子:「一番条件が良いのは、新しい方の2柱ですので、それにしましょう。
えと、生命維持装置睡眠モードから通常モードに、代謝モニターは...
代謝量に基づく脳細胞残存率が67%と63%、これは入廟時に対してです。
ES細胞注入前の値が62と60でしたから、増えた分が新規の神経細胞です。
但し、その間も死滅する分があるので実際の新規分はそれ以上になるわけです。」

真理亜:「むっ、誰もおらんのか。奴隷はどこだ。逃げたな。お仕置きしてやる!。
誰か、奴隷を捕まえてこい。それから電気鞭をもてい...。」

マサ:「ううう、どこかにいい鴨は居ないかなあ。えへへ...くんくん。あっ。
そこの親切な人、フェラ焼き持ってきてくれたのね。お願い、ねえってば、クレクレ。」

亜依羅:「お供えを求めているわね。与えても良いかしら?。」

桃子:「マサ侯の方は危険性が無さそうですので、腕の動作を許可してみましょう。
どうぞ。先代公の方は危なそうなので落ち着くまで止めておきましょう。」

亜依羅:「ご先祖様、フェラ焼きですよ。」

マサ:「おお、ありがたや、レロレロ、べろんべろん太い太い...」

華子4世:「なるほど、お供えにアメリカンドックが必要なわけだね。」

亜依羅:「いつもこんな調子なのです。今日はいくらか欲求が激しいように見えますね。」

桃子:「実際そうでしょう。生着した新規神経が既存部分の強い箇所に誘導されるのです。
この2柱は亜依羅の先祖のうちでも最も欲望のおもむくままに生きてきた方だったそうね。
したがって、既存部分の強い箇所が明瞭で新規神経が憑きやすいのでしょう。
そのために比較的老いたES細胞でも生着が進んだのだと考えられます。」

華子4世:「なるほど。脳細胞は容易に増やせても有用な方向に導くのは難しいかな。」

桃子:「そういうことです。そして脳自体より教育や生活環境の問題になります。
廟の亡霊や非人で実験したのでは有用な方向への刺激が少なくて成果が上がりません。
また、まとめて注入するより毎日少しずつ補充するほうが生着率も上がるでしょう。
したがって、ある程度安全性を確認後は長期航行中の艦で実験するしかないと思います。
艦内なら常時任務をこなすため刺激もあり、閉鎖環境なので状態管理もし易いのです。」

華子4世:「痴呆症のシビリアン向け施設で被験者を募るというのはダメかしら?。」

桃子:「無理でしょうね。一旦すぐ効果が判るほど脳細胞が減ったら脳幹が機能しません。
サイボーグは生命維持を脳幹に依存していないから大脳に生き残る部分が存在するのです。
この2柱は有脊髄型なので下位機能の老化状況も追えますがやはり一部を除き死んでいます。」

華子4世:「生き残る下位機能ってどこなの?。」

桃子:「この2柱では外性器対応部の残存率が高いです。再生も比較的盛んな部位ですね。
まあ、そのせいで投入したES細胞がそちらに喰われてしまってIQが戻らないのかも。」

華子4世:「それで、人工小脳型ばかりが揃い、緊張の連続で閉鎖環境な艦で実験したい?。
なんだか、恒星間航行艦乗員への自推を正当化したくて言っているようにも聞こえるわね。
貴女は元老院議員に選ばれたばかりで任期があと6年あるからかなり厳しいわよ。」

桃子:「所詮互選だから代わりは居ますよ。明日の制憲会議は目一杯協力しますから。」

華子4世:「ふふ。ではとりあえずこの2柱がもう少しまともに口を利くようにしてね。」

桃子:「おやすいご用です。身体制御CPUの覚醒パルス振幅を上げてみますよ。はい。」

マサ:「れろれろ、がぶっ、あ、ご免、食いちぎっちゃったよ。あれ?。あら有栖!。」

亜依羅:「亜依羅ですが。」

マサ:「亜依羅だったの。そっくりだから判らないわ。えと、そちらの方は?。」

亜依羅:「頭部外装パーツを同じ職人にやらせていますので仕方ないですね。
今日は東宮様がご視察にお見えです。ご先祖様から長期航行の経験を引き出したいと。」

マサ:「え?。一体今は何年なの?。私の知ってる東宮様は...ダメ思い出せない。」

亜依羅:「皇紀195年です。現皇帝は朝子10世陛下、現東宮は華子4世殿下です。」

マサ:「もうそんな時代だったっけ。で、何でしたっけ?。」

華子4世:「長期航行中の生活で困ったことについて知りたいのよ。
最近は人工小脳型サイボーグが充足し、カイパーベルトに農産施設付き工場も配置されたわ。
それで火星以遠の航行が核パルス推進艦ばかりになって任務期間が短期化してる訳ね。
貴女が現役の頃は旧式のイオン推進艦で冥王星に行っていて4年間とか当然だったでしょ。
最近は補給地で手軽にボディをすげ替えて地上並みの生活するのが当然になっているしね。」

マサ:「長期任務で辛かったのは、繁華街がない事かな、あとブランドファッションとか。
一体どこまで行くのですか?。カイパーベルトの先に惑星でも見つかったのですかね。」

華子4世:「近隣の恒星を目指すのよ。近々出来る機関だと最短片道40年ね。」

マサ:「それって殆ど一生じゃ!。一生繁華街に行けないなんて気が狂いそうorz。」

真理亜:「繁華街より奴隷が必要よ。思い切り苛め甲斐がある奴隷がね。」

亜依羅:「あ、先代公、落ち着かれたのですね。」

真理亜:「とっくにね。つっこみ入れるタイミングを待っていたのよ。40年か、長いな。
反抗的な非人を揃えておくが良いわ。すぐにめげる奴では飽きてしまうわよ。」

華子4世:「繁華街に非人か。かなり荷物が増えてしまうわね。」

桃子:「実験用に非人は必要ですが、繁華街はそもそも無理でしょう。」

華子4世:「都市型とまでは行かぬが増結コンテナの直径と長さは100m以上になる。
1個増やせば、耐G性に問題がない造りは難しいが街を再現するのは不可能でもないな。
着陸に適当な天体がない場合に備えて、基地衛星を築く資材は積まねばならないしね。
街に男が居ないのが問題かな。ダッチアンドロイドの利用も考えなくてはいけないかも。」

マサ:「眠くなってきたよ。その前にお供えもう一本おくれ。」

真理亜:「藻前は廟に入っても相変わらず怠け者だな。ふああ、だるい、あっ、いかん。」

桃子:「覚醒パルスの効きが落ちているようです。もうじき限界ですね。」

華子4世:「十分だわ。いまいち確信がなかった部分がはっきりして良かった。
帰ろうか。桃子、明日の制憲会議では宜しく協力頼むわよ。」

亜依羅:「でわ、ご先祖様、ごきげんよう。お供え置いていきますのでごゆっくり。」


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(青の公家邸)

亜依羅:「有栖公、ただいま戻りました。」

有栖:「お疲れさま。あ、東宮様!。どういうこと?。何か失敗をしでかしたのかい?。」

華子4世:「中将、ご心配なく。私の勝手な用件で憑いてきたのです。」

亜依羅:「東宮様は、廟のご視察を所望されております。」

有栖:「どうぞご存分に、そうだわ、小間使い、お供え物にアレを用意して頂戴。」

小間使い:「お持ちしました。5本で宜しかったでしょうか。」

亜依羅:「十分よ。どうせ、すぐ覚醒できるのは多くて4,5柱でしょう。」

華子4世:「アメリカンドック!?。変わったお供え物ねえ。」

亜依羅:「最近入った先祖に好きな者が居て、伝染したのです。理由は見れば判ります。」

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(帝都 宮殿)

亜依羅:「東宮様、ただいま戻りました。」

華子4世:「公家邸に寄る暇もなく呼び出して済まなかったわね。
実は私も工場衛星の開発部門を回ってきて地上に降りたばかりなのよ。
明日には制憲会議でしょ、その前にどうしても貴女と相談しておきたくてね。
まずは無人航路標識艦の放出成功ご苦労様でした。」

亜依羅:「成功と言いましても航路標識としては甚だ心許ない代物ですよ。
なにしろ目一杯加速したところで放出時の速度は光速の1%にすぎません。
まだイオンエンジンで加速を続けていると言っても殆ど誤差ですからね。
5年後では、オールト雲の障害物すら余程大きな物しか検知できないでしょう。
恒星間飛行艦はすぐに追い越してしまいますよね。」

華子4世:「まあ、発進したら半年で追い越すことにはなる罠。
それでも初期加速中の核パルスノイズがきつい期間だけはカバーしてくれる訳だ。
それに、アレを飛ばした主目的は追い越した後の通信中継だったでしょうが。
もちろん、元老院に対しては航路の安全確認が進んでいるという既成事実になるがね。」

亜依羅:「乗員の立場からは先行艦が障害物を検知してくれる安心は大きいですよ。」

華子4世:「もう自分が行く気で居るようね。でも選考はこれからなのよ。」

亜依羅:「有栖公の内諾は得てありますから余程のことがなければ落ちませんよ。」

華子4世:「希望者は多いのよ。それに各公家の意向と能力だけでは決まらないわ。
単に飛行の安全だけを考えたら優秀な航宙士ばかり集めれば済むでしょう。
でもね、最終目的は技術と文化、風俗習慣を含めた地球の待避所を作ることなのよ。
それには雑多な趣味や能力のある者をバランス良く集める必要があるわけ。
それに、通信に片道何年もかかる以上、そこには皇帝の直接統治が及ばないでしょ。
だから、送り込まれる皇族や分公家の勢力バランスだって考慮しないといけないわ。
いくら体を機械化したって地縁血縁のような人間の本能は抑えようがないんだからね。
つまり、現地の政治バランスを保つために優秀すぎる人が除かれる余地もあるのよ。」

亜依羅:「私でしたら十分遊んでますからそのような観点からも相応しいかと。
で、ご相談ごとは何でしたっけ。」

華子4世:「今の話とも関わるのだけど、今日、青の公家廟を訪ねておきたいのよ。
おたくは経験の蓄積を重んじて早くから廟のシステムを整備してきたでしょ。
婚姻によってシビリアン上がりの一代貴族を編入する取り組みも熱心だったしね。
つまり、あそこは帝國で最も雑多な経験が蓄積されていることになるわ。
それに、桃子たちと共同でES細胞を用いた残留脳補修実験もやっているわね。
桃子の話だとIQが30以上残っている残留脳は相当多いんじゃないの?。
それなら聞き出せる経験もかなりあてに出来るわ。実験結果自体も重要だし。
もし、現役の者に適用できる成果があれば遠距離航行限界の概念も変わってくるわ。」

亜依羅:「廟をお訪ねいただくのは一向に構いませんがお役に立つかどうか。
IQ30と言いましても脳のどこが生き残っているかで反応はまちまちです。
ES細胞による脳修復だって元に戻るのではなく新たな神経回路が加わるだけです。
どんな機能が加わるかも残留脳の気まぐれ次第でして、コントロールは出来ません。
若いとき計画的に採取されたES細胞ではないから活性もいまいちなんです。
ご多忙の折に無意味で聞き苦しい戯言ばかり聞かれるのは如何なものかと。」

華子4世:「制憲会議で議員に何を言われるか前例がないから予想もできないわ。
今は、戯言のお告げにでも頼りたい気分なのよ。」

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オプションパーツシリーズ未来編「ケンタウリ」 | −−(2)制憲会議−− | 1/5

今日は、東宮が試作品の恒星間航行要員用ボディを着けたまま工場衛星から降りて来た。
明日は制憲会議だというのに随分はしゃいでいるようだ。
若いのだからはしゃぐのも仕方がないが、少しは皇家の体面も考えて欲しいものだ。
まあ、本当は自ら恒星間艦隊を率いたいところを我慢させているのだから悪いのは私なのか。
適任者さえいれば、本来なら東宮にはもう少し年長の者を充てるべきかも知れない。
だが、最初の恒星間航行にあたっては送り出した宙軍大臣が初めに帰ってくる艦を出迎えるべきだ。
それを遂行できる者は華子4世しか居ない。気の毒だが、それがあの娘の巡り合わせである。
皇族はみな、帝國の発展段階に間に合わせるべく選ばれた遺伝子を持って生まれてくるのだ。
私だってそうだった。だが、私は冥王星1番乗りの栄光に浴しただけ幸せだった。

上級皇族SNS・皇帝朝子10世のブログより

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