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ここはSF・オプションパーツ2「ケンタウリ」総集編(一般向け)サイトです。  2008.05.11連載再開に向けてテンプレ修正、エントリをシーン単位に変更。 2009.07.20 連載第9回まで掲載。

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平和祈念シリーズ4・鋼鉄のブルカ

 私、アリバーン第13女子ネ申学校四期生ラマダーニャは今日、アリバーン最精鋭戦闘員「鋼鉄のブルカ」への最期の関門・カブルカの試練に臨む。
試練に耐え、鋼の体を得ただけが、鋼鉄のブルカを被る資格を持つのだ。

我らが誇る聖女カブルカ以下の一期生たちは、たった3日しか生きられない鋼の体となって、背水の陣で地獄の業火の扉を開いた。
これを先陣として地獄の業火を得たアリバーンは、米帝の悪魔の手先1万人と米帝に魂を売った拝牛教徒ら1000万人を焼き尽くした。
だがその奮闘は、後に続く我らに対して、至福の来世への関門を一層の高みへと持ち上げてしまった。
米帝と拝牛教徒もまた、いにしえの大悪魔・カインシュタインがもたらした地獄の業火を使い、アリババード、ブルーカ、ペチャワールなどわが拠点を焦土とした。
しかし、我らは古来山の民であり、拠点といっても所詮はかつて悪魔の手先が建てたあばら屋を再利用しただけである。
我ら第13女子ネ申学校残留生は山の洞窟で悪魔の業火をやり過ごし、悪魔の再来に備えてきた。
そしてネ申は我らにも試練の機会を与えたもうた。
アリバーンの聖戦士らは地獄の業火が残した猛毒の塵をものとせず、血を吐きながらも焦土を掘り起こし、鋼のの秘密を持ち帰りつつ果てた。
それは地獄の業火が放つ見えない死の光に撃たれて息絶えた、一体の敵鋼が遺した骸であった。
腹部が焼け残った骸は、鋼のが3日を超えて生き存え、繰り返し戦うためのからくりを残していたのだ。
洞窟のからくり職人達はやがてその仕掛けを解き明かし、模倣することができた。
からくりの中身は、わが友邦にして聖地の守護者を任じる砂の王国にてよく使われている、海の水を真水に換えるからくりと同じ物だった。
この一方に血を巡らせ、他方には新鮮な髄液を流せば、鋼のは血が悪くなることもなく戦い続けられるようだ。
新鮮な髄液がかなり多く必要だが、それは悪魔の手先を捕虜にして首を刎ね、搾り取ればよい。
おかげで私たちも、3日の期限に縛られず戦いを続けるようになれる。
オボンベイから来援し、髄液灌流のからくりを見抜いて下さった聖戦士にして名医のDr.アンザリは、きっとネ申のお使いなのだろう。

Dr.アンザリの呼ぶ声がする。
いよいよ私の番だ。
手術室に入る。
殿方もいるが、級友が入念に髪を剃ってくれたからブルカなしでもネ申のお怒りに触れる畏れはない。
手術台に寝ると、摘出班総出で手足と胴、首にU字型の枷を嵌め、台に穿たれた螺子穴に太いボルトで固定して下さる。
最後に両耳に開けた太いピアス穴にチェーンを通して固定して下さる。
これでも普通なら頭が動くことはないだろうが、カブルカの試練では僅かに首が動いてしまうことがある。
頭蓋切断中に首を動かしてしまったら、おそらく丸鋸が私の脳を切り裂き使いものにならなくしてしまう。
それは残念ながらネ申が私を選んで下さらなかったということになるのだろう。
だが、これまで真剣に修行に励んできた私がここで見捨てられることは、まず無いと信じたい。
祈りの言葉を唱え、精神を統一する。
祈りの言葉が済むと、Dr.アンザリが優しくギャグを嚼ませて下さる。
これで試練の間に舌を咬んでしまう心配もない。
仮に舌を咬んでも、素早く脳を鋼の体に移せば問題はないのだが、試練と関係のない苦痛を与えないという皆さんの心遣いだ。
丸鋸が回り出し、精密アームがしずしずと降りてくる。
右のこめかみに丸鋸が当たる。
頭皮と筋膜は痛みを感ずる間もなく瞬時に切れ、丸鋸が頭蓋骨に食い込む。
その瞬間、脳天から爪先に突き抜けるように太く鈍い痛みが襲いかかってくる。
声を出さずに祈りの言葉を唱え、さらなる痛みに備える。
頭蓋の形に沿うように、丸鋸が額へと切り進む。
丸鋸の細かな振動とともに頭全体にもっと太く痛みが広がる。
ネ申学校に入ったときに捨て去ったはずの涙が滲んできてしまう。
既に頭蓋骨が半周近く切れ、残りの部分に歪みが広がっているのだろう。
どうかネ申に選ばれますようにと必死に祈る。

あと少しの我慢だ。
だがもう限界に近い。
早く切り終わって欲しい。
唐突に丸鋸の騒音が消え、一瞬の静寂が訪れる。
一瞬、視界にDr.アンザリの微笑みをたたえた顔、よく頑張ったと言って下さっているのか。
残った頭の縁に何かが触れる感触。
一瞬の後、嘘のようにかき消える痛み。
私は耐え抜いたのだ。
耳が聞こえなくなり、次いで完全な暗闇が訪れる。
全ての神経が切断されたのだ。
それからどれだけ音も光もない時間が続いたのだろうか。
あるいは気を失っていたのか。
突然光が見え始める。
音が聞こえ出すが意味がとれない。
音楽などという邪悪なものはここにあるはずもないから、誰かの祈りの言葉か。
少しずつ視界が開けてくる。
天井が見える。
ここは手術室に続く鋼の工作室だろう。
耳もはっきり聞こえてきた。
Dr.アンザリの声だ。
右脚を持ち上げてみろと仰せのようだ。
こわごわ、脚に力を入れる。
なんと軽い脚だろう。
鋼の脚になったのならそんな筈はないのだが、力が強くなったからそう感じるのだろうか。不思議だ。
一通りの調整は終わったから起き上がれと言われる。
起き上がると脚が見える。
確かに鋼の脚だ。
静かに脚を降ろし、立ち上がる。
数人の屈強な殿方が力を合わせて、鋼のブルカを持ってきて下さる。
そうか、私は今、裸身でブルカもなく殿方の眼前に立っているのか。
だが、ファトワによれば、鋼のは裸身にあっても裸身にあらずとされるからネ申がお怒りになる心配はない。
鋼のブルカは戒律のために被るのではない。
敵の砲弾から身を守るために被るものだ。
そしてなにより頭の部分に内張りされた鉛板が、悪魔の業火が放つ見えない死の光を防いでくれる。
その代わり、これを被っている間は特段足下に注意しなければならない。
体と合わせたら大変な重さになるからだ。
美しく塗装された真新しい鋼のブルカをいま受け取り、両手で軽々と持ち上げて被る。
殿方が大きな鏡を持ってきて下さる。
ネ申は偉大なり、わき起こる殿方の歓声。
なるほど、鏡に映る私のブルカ姿は異人の偶像を彷彿とさせる神々しさだ。
はっとなって、必死に邪心を振り払い、ネ申に赦しを請う。
この先いかに多くの敵を斃そうと、私は決して偶像になってはならない。


耳の感度を上げてみる。
きーん、と微かな金属音が遠く聞こえる。
低高度で迫る悪魔の飛行兵器だ。
さらに耳を澄まし、神経を集中して特徴を。
これは巡航ミサイルではなく、有人機だ。
食断ちの月で我らの動きが鈍ると侮っているな。
生憎私は、一年中が食断ちの月なのさ。
いや、本当はお前たち悪魔どもの命を食しているのかも知れない。
レーダーに映らぬから大丈夫だなどと思うなよ。
ネ申に選ばれた私の耳目はもうお前の姿を捕らえている。
尾翼にロケットをくらい狼狽えるお前の姿すらもう見えている。
お前たち悪魔のパイロットは性根が腐っているから、被弾しても自爆しない。
そして落下傘降下したお前たちは無力だ。
こんな易しい獲物は他にない。
おかげで来月も私は戦いを続けられるよ。


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あとがき
アフガンに深く関わった国からは、必ず首を刎ねられる犠牲者が出ます。
もしかしたら、単なる虚仮威しではなく、刎ねる動機があるのかも知れませんね。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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