オプションパーツシリーズ未来編「ケンタウリ」 | (3)核実験 | 6/72007-07-07 Sat 09:12
(5日後、フォボス付近の火星降下艇)
作業本部から通信:「核融合推進実験施設電源起動完了。リニアカタパルト各機正常。 作業員は全て宇宙空間に撤収しました。1分で安全距離に達します。」 知子3世:「再度全部隊に通達。これより核パルス実験施設周囲6Km以内に接近を禁ず。 5分後に推進実験を開始する。」 作業本部:「了解。6Km以内への進入を禁止します。」 知子3世:「さてと。もう一度フォボスの自転をチェックしようか。ぶれは出ていないな。 次、カタパルトのプログラムチェック。種原爆点火後、0.1秒間隔で9500発。 最後は0.11秒間隔で500発で間違いなしね。始めて良いわね?。」 華子4世:「どうぞ。始めて下さい。」 知子3世:「でわ起動。ぽちっと...種火点火!おー、明るい明るい!誘爆成功よ。」 華子4世:「メインシャフトのジャイロスタビライザーにかかる負荷はどう?。」 知子3世:「いまのところねじれ方向の力は小さいわ。最後まで続けられそうね。」 華子4世:「予想より爆炎の位置が近い気がするけど温度上昇は?」 知子3世:「どうにか水銀で吸収できているわ。爆風受け裏面で最高200度。」 華子4世:「それくらいなら何日でも保ちそうね。」 知子3世:「この温度分布なら計算上は恒星間往復でも持ちこたえられるはずだわ。 そろそろ間隔が開く頃よ、不発出ないと良いけど。お、爆炎少し遠くなったかな。 何とか点火できているか。あ、終わったわ。」 華子4世:「最後の500発もちゃんと全部誘爆したのかしら?。」 知子3世:「ざっと見た限り爆発したと思うわ。パルス毎に見える訳じゃないけどね。 あとで施設内の振動計に残った記録を解析すれば何個パルスが来たか検証できます。」 華子4世:「フォボスの公転速度変化はどうなの?。」 知子3世:「秒速にして0.01mくらいですね。」 華子4世;「加速18分で0.01m/sか。爆炎が近めだったから、結構出たな。 これは、あんまりやりすぎるとフォボスが静止軌道に移ってしまいそうね。」 知子3世:「西から昇らなくなったら観光関係から文句が出るかしら。」 華子4世:「はは冗談ですよ。この程度なら数年で火星がブレーキかけてくれるわよ。 天然衛星の軌道を変えるにはまだ力不足ね。でも、宇宙船推進用なら恐るべき推力だわ。 フォボスの質量が約10の13乗トンだから、100万トンの艦なら同じ推力で10Gは出るわね。 こんなペースで加速できるなら20.5光年だってじきに手が届かないものかしら。」 知子3世:「ショックアブソーバーの効きが十分か振動解析結果を調べないと判りません。 それに乗員や船体が耐えられると仮定しても弾切れがあるから連続運転は出来ないんです。 融合弾を全て完成品で積むと嵩張りすぎて船体容積が膨らみ強度不足になります。 したがって融合弾の大部分は素材を積んで行って艦内で組み立てる必要があるのです。 艦内で融合弾を組み立てられるペースは現状でさっきの消費ペースの10分の1なんですよ。 単純に生産設備を増やせばそれだけ船体重量が大きくなるしコストもかかりすぎます。 工程を最適化して生産性を上げる手を尽くしても半年の断続運転で光速の13%が限界ですね。 あとは余程軽くて強度がある素材か少量で爆発力が大きい燃料が新たに見つからないと無理。 とりあえず今日の実験は成功だから話の続きは帰りがてらにしましょ。じゃあ、出すわね。 全部隊に通達。核融合パルス推進実験終了。施設周囲への進入禁止解除。施設点検にかかれ。」 作業本部:「了解。施設点検班は作業にかかれ。」 華子4世:「とりあえず打ち込み誘爆式の核融合実験成功ご苦労様でした。 でも欲を言ったらきりがないけど宙軍行政の責任者としてはあと少し推進力が欲しいわ。 水素やヘリウムじゃなくて船体強度に貢献する物質が核融合してくれればいいのに。」 知子3世:「確かに炭素でも使えればカーボンファイバーの壁を崩して燃料に出来ますね。 でも重い元素が融合する恒星内部のような状態はまだ人工的に作れないですからね。 それに、今の計画速度だって障害物回避が難しいのにもっと早くなったら操縦がきついわ。」 華子4世:「恒星並みのエネルギーが自在に扱えれば漫画みたいなバリアも出来るかもね。」 知子3世:「バリアは無理だけど、今だって重エキシマ砲の強化は頑張っているのよ。 ただ、撃つか避けるかは人が判断するしかないでしょ。その応答速度が問題だわ。 優秀な操舵員の反応は機械より早いくらいなんだけど、リモートリンクの遅延があるでしょう。」 華子4世:「それならアナログで直結すれば改善できることになる訳ね?。」 知子3世:「アナログといっても大昔の飛行機みたいなワイヤーじゃ耐Gが無理だわ。 運動だけ直結にしたところで視覚の遅延だってあるし。」 華子4世:「ワイヤーじゃボディの動作で機械的遅延が出るから結局今と一緒だわ。 そうじゃなくて、人工小脳内のアナログ信号を首のソケットから直取りできないかって事よ。」 知子3世:「それって、首だけ外して操縦装置に繋げってことよね。獄門台式で?。」 華子4世:「その通り。それに薄型の特製獄門台を使えばヘッドフィギュア内で操縦できるわ。 ヘッドフィギュア眼球のすぐ後ろに操縦席を置けば視覚の遅延も最小化できるでしょう。 こんな配置にしたらどうかしら?。」 知子3世:「たしかにこれなら緊急時の射撃や回避運動の応答時間は早くなるわね。 だけど、ヘッドフィギュア内は防護壁も薄いし小物体が貫入して当たったらお陀仏ね。 これでは、大昔のウィドウメーカーと似たようなものだな。」 華子4世:「ウィドウメーカーって何ですか?。」 知子3世:「操縦席配置の歴史に興味があって調べた古い資料で知ったことなのよ。 プロペラ機が主流の時代に大変不評だった爆撃機の席配置についたあだ名よ。別名後家作り。 当時は爆撃を目視でやるので見晴らしの良い機首に爆撃手席が配置されることがあったの。 ところが戦争中に無理して高性能化したら離着陸速度が速くなって着陸事故が増えたのね。 折角機体が生還したのに事故で爆撃手だけがよく死ぬというのが非常に嫌われたのよ。 搭乗員の心理なんてプロペラ機でも核パルス推進艦でも大して変わらないでしょう。 こんな危険な操縦席に乗りたい操舵員が居るかしら?。今居る志願者も逃げ出すわよ。」 華子4世:「首だけなら前面投影面積が小さいから貫入事故での生存率は悪くないわ。 より大きな物体が避けきれずに艦ごと難破する確率とどっちを重く見るかだけの差よ。」 知子3世:「理屈は解るけど非常時に脱出できないために生じる恐怖心はどうかしら?。」 華子4世:「操舵員が脱出するような事故って後部船体の爆発ぐらいでしょ。 そう言うケースでなら前部船体だけ切り離せばそのまま操縦して逃げられるわ。」 知子3世:「なるほど。今どきの若い娘にはそう言う考え方もあるのかなあ。 帰ったら船体各部の設計責任者を集めて検討してみるわ。でもなんか引っかかるなぁ。 何となく貴女の首外し趣味に乗せられているような希ガス。」 華子4世:「気のせいですよ大叔母上。まあ私はどう思われようと構いません。 とにかく可住惑星の獲得に繋がるアイデアなら何でもありですから。」 Prev ←→ Next |
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